「男と女のラブゲーム」武田鉄矢・芦川よしみのCMから大ヒットするまで イラスト

CMイラスト
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「男と女のラブゲーム」はなぜ大ヒットしたのか?CMから生まれたデュエット曲と7社競作の謎/武田鉄矢版は後発だった? イラスト

「飲みすぎたのは、あなたのせいよ」で始まる昭和の名曲

「飲みすぎたのは、あなたのせいよ」

この一節を聞くだけで、「男と女のラブゲーム」を思い出す人は多いのではないでしょうか。

「男と女のラブゲーム」は、1986年に放送された武田薬品工業「タケダ胃腸薬21」のCMから生まれた男女のデュエット曲です。CMでは武田鉄矢さんと芦川よしみさんが、スナックのような夜の店を思わせる場所で、男女の駆け引きを演じるように歌っていました。

胃腸薬のCMでありながら、商品名を繰り返すのではなく、「飲みすぎた男女の会話」をそのまま歌にしてしまったところが印象的でした。曲と映像と商品が自然につながっており、わずかな時間のCMでありながら、一度聞くと忘れにくいものになっていました。

作詞は魚住勉さん、作曲・編曲は馬飼野康二さんです。当初はCMで使うサビの部分だけが作られましたが、放送後の反響が大きかったため、AメロとBメロを加えたフルサイズが制作されました。馬飼野康二さん自身も、CM放送後の反響を受けてフルサイズを作ったと振り返っています。

馬飼野康二さんといえば、音楽を担当するアニメ『忍たま乱太郎』およびその原作となる『落第忍者乱太郎』の登場キャラクター・魔界之小路(まかいの こうじ)のモデルとしても有名です。ちなみに『落第忍者乱太郎』のアニメ化は馬飼野が提案したもの。ある日、自身の子どもが自宅で『朝日小学生新聞』を読んでいた際に『落第忍者乱太郎』を目にし、「面白いからアニメにしたらどうか」と思い立ち、原作者の尼子騒兵衛へ連絡を取りアニメ化を提案した。

武田鉄矢さんと芦川よしみさんは背景と別レイヤーです。また、レコードジャケット、CDジャケットですと、真四角の画角のものしかないため、16:9サイズはこのイラストだけになります。


CMを見た人は武田鉄矢と芦川よしみがレコードを出すと思った

CMの中で歌っていたのは、武田鉄矢さんと芦川よしみさんでした。

そのため、レコードが発売されると聞けば、当然この二人が歌うものだと思った人も多かったはずです。CMの映像と二人の掛け合いが強く印象に残っていたため、「男と女のラブゲーム」といえば、まず武田鉄矢さんと芦川よしみさんを思い浮かべる人も少なくありませんでした。

ところが、最初にレコード化されたのは二人の歌唱ではありません。

1986年12月21日に発売された、日野美歌さんと葵司朗さんによるバージョンでした。日野美歌さんは「氷雨」で知られる歌手で、葵司朗さんとの歌唱版が「男と女のラブゲーム」の代表的な音源として定着していきます。

CM出演者と最初のレコード歌手が違ったため、当時の視聴者には少し意外な展開だったのではないでしょうか。


最初のレコード版は日野美歌・葵司朗

日野美歌さんと葵司朗さんの歌唱版は、現在でも「男と女のラブゲーム」の代表版として広く知られています。

男女が交互に歌う会話形式が分かりやすく、どちらか一方だけが目立つのではなく、二人の掛け合いによって曲が完成します。少し大人びた雰囲気を持ちながらも、重くなりすぎず、演歌やムード歌謡に詳しくない人でも覚えやすい曲でした。

作曲した馬飼野康二さんも、さまざまな歌手によって歌われた中で、最もヒットしたのは葵司朗さんと日野美歌さんのバージョンだったと思う、と語っています。

1988年には、JASRAC賞の銅賞も受賞しました。JASRAC賞は、前年の著作物使用料の分配額が多かった作品を表彰するものであり、「男と女のラブゲーム」がレコード販売だけでなく、カラオケなどでも広く利用されていたことを示しています。


同じ曲を別の歌手が歌う「7社競作」になった?/歌った歌手が多い曲

「男と女のラブゲーム」の大きな特徴は、同じ時期に多くの歌手がレコード化したことです。

1986年から1987年にかけて、レコード会社7社による競作となりました。現在の感覚では、ヒット曲が後からカバーされることは珍しくありません。しかし、この曲の場合は、ほぼ同時期に複数の会社がそれぞれ別の男女を組ませて発売しています。

主な歌唱者には、次のような組み合わせがありました。

  • 日野美歌さん・葵司朗さん
  • ロス・インディオス
  • 芦川よしみさん・矢崎滋さん
  • 田辺靖雄さん・九重佑三子さん
  • 黒沢ヒロシさん・石川みゆきさん
  • 高樹一郎さん・津山洋子さん
  • 前田吟さん・滝里美さん

同じ「男と女のラブゲーム」でも、歌う人が変われば声質や男女の距離感も変わります。

本物の夫婦による歌唱もあれば、俳優同士の組み合わせもありました。どの盤を買うかは、歌手の知名度や好み、レコード会社の宣伝によっても分かれたことでしょう。

ひとつの曲が複数社の競争になるほど、CM放送後の反響が大きかったということです。


なぜスナックやカラオケで定番曲になったのか

「男と女のラブゲーム」が長く残った最大の理由は、単にCMが有名だったからではありません。

この曲は、男女が一緒に歌う場面に非常によく合っていました。

歌詞は男女の会話のように進みます。女性が少しすねたり、男性がなだめたりしながら、最後は二人で声を合わせます。難しいハーモニーを長く続ける曲ではないため、プロの歌手でなくても役になりきって楽しめます。

また、CMの舞台自体がスナックのような雰囲気でした。視聴者はCMを見た時点で、自然に「夜の店で男女が歌う曲」というイメージを受け取っていたのでしょう。

スナックやキャバレー、カラオケのある飲食店では、男女が一曲ずつ歌うだけでなく、一緒に歌えるデュエット曲が重宝されます。「男と女のラブゲーム」は曲名も歌詞も分かりやすく、初対面に近い相手同士でも、少し芝居を交えながら歌える曲でした。

JASRACも、この曲を「カラオケのデュエットで愛された作品」と紹介しています。


CMと曲の内容が見事につながっていた

このCMが優れていたのは、曲が単なる飾りではなかったことです。

「飲みすぎたのは、あなたのせいよ」という歌詞は、男女の恋愛の駆け引きとして成立しています。それと同時に、「飲みすぎた人のための胃腸薬」という商品にも直結しています。

つまり視聴者は、歌を楽しみながら、自然に胃腸薬のCMとしても記憶していたのです。

商品名を何度も連呼しなくても、飲酒、男女の会話、夜の店、胃腸薬という要素が一つにつながっていました。CMソングとして話題になり、その後は商品から離れても一曲の歌謡曲として成立したところに、この曲の強さがあります。


武田鉄矢・芦川よしみ版は後からレコードで聴けるようになった

CMで歌っていた武田鉄矢さんと芦川よしみさんのバージョンは、当初の代表盤にはなりませんでした。

しかし、二人の歌唱が商品化されなかったわけではありません。

1987年には、武田鉄矢さんと芦川よしみさんによる新たなデュエット曲「男と女のはしご酒」が発売され、そのカップリングに「男と女のラブゲーム」が収録されました。武田鉄矢さんの公式サイトにも、「男と女のはしご酒」と「男と女のラブゲーム」が同じ作品に収録されていることが記載されています。

CMを見て「この二人の歌で聴きたい」と思っていた人にとっては、少し遅れて待望の音源が登場した形です。

なお、当初すぐに武田鉄矢さんと芦川よしみさんの盤が出なかった理由については、所属レコード会社の違いや武田さん側の意向など、複数の説明が伝えられています。公式に統一された説明を確認しにくいため、「さまざまな事情から当初は実現しなかった」と捉えるのが安全でしょう。


続編「男と女のはしご酒」も生まれた

「男と女のラブゲーム」の反響を受けて、1987年には武田鉄矢さんと芦川よしみさんによる「男と女のはしご酒」が発表されました。「別れがつらいヒロシ」とサビの2フレーズめから始まるようになっています。

こちらも「タケダ胃腸薬21」のCMで披露され、今度はCMと同じ二人の歌唱でレコード化されました。JASRACによる馬飼野康二さんの作品紹介でも、「男と女のラブゲーム」と並んで「男と女のはしご酒」が代表曲として挙げられています。

「ラブゲーム」の次が「はしご酒」という展開も、飲酒と胃腸薬を結びつけたCMシリーズらしいものです。

ただし、現在まで最も広く知られているのは、やはり「飲みすぎたのは、あなたのせいよ」という冒頭を持つ「男と女のラブゲーム」でしょう。


CMソングから昭和を代表するデュエット曲へ

「男と女のラブゲーム」は、最初から一曲のヒット歌謡曲として企画されたわけではありません。

まずCM用にサビだけが作られ、放送後の大反響を受けてフルサイズになりました。その後、日野美歌さんと葵司朗さんをはじめ、多くの歌手がレコード化し、7社競作にまで発展しました。

そして、テレビのCMで耳にした曲が、今度はスナックやカラオケで一般の人々によって歌われるようになります。

この流れを整理すると、「男と女のラブゲーム」は、

CMから生まれ、競作によって全国へ広がり、カラオケによって定番化した曲

だったといえます。

CMに出演した二人とは違う歌手の盤が先にヒットしたことも、同じ曲がこれほど多くの男女によってレコード化されたことも、現在ではなかなか見られない展開です。

「飲みすぎたのは、あなたのせいよ」という一節は、胃腸薬のCMコピーのようでありながら、男女のデュエット歌謡としても完璧に機能しました。

だからこそ「男と女のラブゲーム」は、一時的なCMソングで終わらず、昭和を代表する男女デュエット曲として、現在まで歌い継がれているのでしょう。

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